【完結】bitter step!
ボクはそのままピクリとも動かずに、暗闇の思考の中に身体ごと投げ出して漫然と漂っていた。

だからどれくらいの時間そうしていたのか、或いはほんの一瞬だったのかも良く分からない。


ただ不意に叩かれたドアの音が、ボクの意識を闇から引き上げた。


母さんならノックなんかしないし、純平が戻ってくるとは思えない。
誰だか知らないけど、ドアの向こうの相手は確かにもう一度、静かにノックした。


誰、と聞くのを躊躇う。
母さんがボクの部屋まで通したのなら、美紗かも知れない。
相手が美紗だと分かっていてどうぞと招き入れられるほど、まだ気持ちの整理がついていなかった。
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