【完結】bitter step!
「ごめんなさい、取り乱して。……もう、大丈夫」


泣いたせいか、変な声が出る。
いつもより少し高く響く自分の声がちょっとだけ気持ち悪かった。

でも先輩は、そんなことは気にもしていない様子で首を横に振ってくれた。


それから、彼の視線がゆっくりと一点に集中する。

どこを見ているのか――、理解した瞬間、サッと血の気が引いていった。


「唇、噛んだの?」


そう言って、先輩は切なげに眉を下げた。
さっき切った唇の傷に……気付かれた。


何故その時――、
後ろめたいと、思ったのか。


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