【完結】bitter step!
先輩は部屋に入ってきた時のボクの態度を不審に感じたかもしれないし、もしかしたらその前には純平とも鉢合わせしていたのかもしれない。

繋ぎ合わせて考えたら、どうなんだろう。
頭が良くて勘の鋭いこの人には、何でこんな傷を負うことになったのか、バレてしまうんじゃないだろうか。


だけど、彼がそれ以上唇の怪我について聞いてくることはなかった。


この人にだけは、知られたくない。
もしも知られてしまったらこの救いの手を失うかもしれないと思うと、それだけで怖い。

卑怯な、狡い、ボクの甘え。
打算と隠し事が加わって、より一層やましく思えた。


ポンポンと2回、頭を撫でられた。
そして――、先輩の顔が近づいたと思ったら、コツンと額同士が当たる。
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