【完結】bitter step!
「良かった。少し落ち着いたみたいで」

その甘い声と近づき過ぎた距離にどきりとする。


「すみ、ま――……あり、が……」

……噛んだ。
抱き合うくらいのこの距離が、急速に恥ずかしくなってくる。


やばい、何今さら照れてんだ。
沢山無様な姿さらした後で、先輩は真剣に心配してくれてるっていうのに。


不自然にならないように注意しながら、少しずつゆっくり距離を取るつもりだったのだけど。
その動きに気付いた先輩とバチッと目が合い――、

「――あ……ッ!ごめん!」

ボクより先輩の方が分かりやすく照れた。
一瞬で赤く染まっていく顔を隠すように、彼は背中を向ける。


「そ、そうだ。渡したい物があって……」

と、誤魔化すように早口でそう言いながらカバンを漁る後ろ姿を、呆気にとられて見つめた。

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