【完結】bitter step!
2月15日、金曜日。

気温は一気に上がっていた。
まだ春一番は吹かないけど、もう冬とは呼べない時期なのかもしれない。

分厚いコートをクローゼットの奥にしまい、代わりに少し薄手のボリュームネックブルゾンを取り出して羽織った。


一晩経ったところで、迷いは消えない。
それでもボクは、朝の待ち合わせ場所に向かうつもりだ。

……春用のアウターと、マスクを装着して。


そこまでの短い道のり、美紗のことと純平のことを交互に考えた。


そもそも美紗は、待ち合わせ場所に来るんだろうか。
彼女と顔を合わせて、普段通りにしゃべれるのだろうか。
それを向こうは望んでいるのか、それとも……何か【変化】を、欲しているのか。

純平――は、来るだろう。
『いつも通り行く』と、約束したのだから。
彼は昨日のアレを、ちゃんとなかったことに、してくれたんだろうか。
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