【完結】bitter step!
「……あるでしょ」

――え?

俯いた先輩が、いつもより低くこもった声で呟いたその言葉の意味は、すぐにはボクに届かなかった。


「僕が君たちの前に現れなければ、こんなことにはなってないんだから」


喉につかえた何かを流し込むように飲んだ緑茶は、いつもより渋くて、苦い。

まるでその苦みに反応して呼び寄せられたかのようなタイミングで、途切れ途切れになった美紗の言葉が頭の中によみがえって響いた。


『――会長がきっかけをくれた――……私の背中を押したのは――……あなたの大切なものを壊して――……』


……どうして気付かなかったのだろう。

先輩は苦しんでいたんだ。
ボクよりずっと頭の良い先輩が、考えないはずがない。


彼女の引き金を引いたのは、自分なのだと。
< 521 / 707 >

この作品をシェア

pagetop