【完結】bitter step!
「こんな風になると思ってなかった。こんな風になおを苦しめることになるなんて」


下を向いたままの先輩の顔を、前髪が隠した。
隙間から覗くのが彼の泣きぼくろなのか――涙なのか、知りたくなくて目を逸らす。


もしも響先輩が現れなかったら、と、全く考えなかったわけじゃない。
けどボクは結論付けたはずだ。
元々おかしなバランスだったボクらの歪な世界に、先輩は必要な人だったと。


「先輩のせいじゃ」

「責めて」

ボクの言葉を遮るそのセリフに、覚えがあった。


――【ボクを責めて。それで、楽になるなら。ボクは全部受け止めるから】――


「全部僕のせいにして、僕を責めてくれていい。口にしたくないなら心の中でそう思って。吐き出す先が欲しければ、梶原なら全部黙って聞いてくれる」


――『いいよ』
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