【完結】bitter step!
それでもあの時、純平はボクを責める言葉をひとつも吐かなかった。
消化しきれない思いは、予想もしなかった別の形で出てはきたけれど。


フォークでケーキをつつく。
生地を切って、生クリームとフルーツも一緒に刺した。


「……先輩って、意外と早口なんだね」


顔を上げた先輩の口元に、ケーキがくっついたフォークをそっと運んだ。

探るようにボクを見返した彼が泣いてないことに安堵しながらフォークを持つ手をさらに伸ばすと、戸惑ったまま、先輩は小さく口を開ける。


「よくしゃべるその口を、塞ぎたいと思います」


そう言うとボクの手の先から、ロールケーキが一切れ、先輩の口の中に消えていった。
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