【完結】bitter step!
不思議なくらい穏やかな気持ちだった。


あの時の自分とリンクした先輩の気持ちは痛いほどよく分かったし、立場が入れ替わったことで、純平の気持ちもなんとなく理解できる。


あの時のキスは――、アレは。
もしかしたら純平は、ボクを黙らせたかっただけなのかもしれない。

『いいよ』

ボクが繰り返したその言葉が、余計に彼を追いつめたんだ。


「甘い? 酸っぱい?」

ロールケーキを咀嚼する先輩に問いかける。

目を泳がせた響先輩の顔が徐々に赤くなっていって、口元を手で覆い隠しながら彼は身体ごと後ろを向いてしまった。
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