【完結】bitter step！

先輩の短い問いかけに、ボクは小さく頷き返した。


「――どうしていいのか、分からない」

絞り出したボクの言葉を、先輩は鼻で笑った。

「えっ、それ笑うとこ？」

思わずそう言ってしまってから、彼の顔に浮かぶ自嘲に気付く。


今先輩が笑ったのは、ボクのことじゃない。
――彼自身のことだ。

その瞬間、両腕にサーッと鳥肌が立っていった。
歪んだ笑みに隠し切れない暗い影が、ボクに何かを訴えかけようとしていた。


「響……先輩……？」

掠れる声で呼びかけると、その影はすっと姿を消して、彼の表情が緩んでいく。


「それはなおが、彼女のことをとても大切に思っているからなんだろうね」