【完結】bitter step!
「嫌いっていう感情を持続させるにはね、なお。物凄くエネルギーが必要なんだ」


テーブルを拭きながら、キョロキョロとゴミ箱を探しながら、見つけたゴミ箱を近くに引き寄せながら、先輩は淡々と語った。


「人はね、そう何年も何年も、誰かを嫌い続けてなんていられないんだよ」

その穏やかな話し方が、紡がれる言葉の意味が、ボクの乱れた呼吸に働きかける。


「君たちの間に何があったのかなんて、正確なところは知らないけど」

震えが収まり、動悸が落ち着く。


「君は、とっくに彼女を許しているんだ」


視界が、晴れた。
見えなかったものが――見えていく。
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