【完結】bitter step!
「まだ、何か怖い?」

問いかけは優しくて、心に起こった波は静かに凪いでいく。
先輩の声は、ボクを少しだけ弱く――、そして、正直にする。


「……少しだけ」

「それは」

そこで一旦言葉を切った先輩を、ボクは首を傾げて見つめ返した。


「彼女が、女性だからかな」

全身が、ビクリと強張った。


ボクだって女の子で。
別にボクを好きだと言う美紗のことを、気持ち悪いとか思ったわけじゃ、ないけど。


怖かったのは、彼女が見ているボクが――、本当にボク自身なのかどうか。
そしてボクは、【本当のボク】を見失った。
長い間美紗の隣で、ボクは彼女の理想にあうようにコントロールされてきたんじゃないかって。


誤魔化そうとグラスに手を伸ばしかけて、中身をこぼして空になっていることに気付いた。


「でも君たちはそもそも、男女の概念に囚われた付き合い方をしてきたのかな」

「……ッ!」
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