【完結】bitter step!
「まだ、怖い?」

先輩が正面から覗き込んだまま、再度問いかけてくる。
顔が……近い。

両手に顔を包まれたままだから、首を振れなかった。

だから

「もう……、大丈夫」

頼りないけど、小さく声を絞り出した。


そこに嘘の欠片がないか探すみたいに、先輩がさらにぐっと顔を近づけて目を覗いてくるから――、


「……ゃっ! 本当にッ!」

悲鳴じみた変な声をあげながら、その両手を掴んで勢いよく顔から離させて俯いた。

こ、これ以上近づいたらッ!
心臓がもたないよ!


「――ごめん、ベタベタ触って」
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