【完結】bitter step!
母さんの手が止まった。
肩幅に足を開いたまま、腕組みして、目を閉じて眉を寄せて、首を30度ほど上に傾けて。
うーん、と小さな声を出しながら考え中の母を、観察する。
思い出せないほど、泣かなかったのか?
まあ、自分で思い出せないから聞いたのだけど。
「そりゃあ、泣いてたわよ昔は」
意外な答えが返ってきたのは、観察するのにも飽きてスープに手を付けた後だった。
どうやら泣いたことがないわけではないらしい。
って、さすがに赤ん坊の時の話じゃないよな?
「あんたが泣かなくなったのは、幼稚園に入ってすぐくらいだったかね。ホラ、純平君? あの子に、『男は人前で泣くもんじゃない』みたいなことを吹き込まれて」
……純平に。
つーか、『男は』?
「あんた、女なのにねぇ」
カラカラと母が笑った。
ボクも、つられるように笑った。
何が可笑しいのか分からない。
それなのに、何故か、笑えた。
肩幅に足を開いたまま、腕組みして、目を閉じて眉を寄せて、首を30度ほど上に傾けて。
うーん、と小さな声を出しながら考え中の母を、観察する。
思い出せないほど、泣かなかったのか?
まあ、自分で思い出せないから聞いたのだけど。
「そりゃあ、泣いてたわよ昔は」
意外な答えが返ってきたのは、観察するのにも飽きてスープに手を付けた後だった。
どうやら泣いたことがないわけではないらしい。
って、さすがに赤ん坊の時の話じゃないよな?
「あんたが泣かなくなったのは、幼稚園に入ってすぐくらいだったかね。ホラ、純平君? あの子に、『男は人前で泣くもんじゃない』みたいなことを吹き込まれて」
……純平に。
つーか、『男は』?
「あんた、女なのにねぇ」
カラカラと母が笑った。
ボクも、つられるように笑った。
何が可笑しいのか分からない。
それなのに、何故か、笑えた。