【完結】bitter step!
ジャリ、と後ろで鳴ったのは、身体を固くした美紗が一歩後退した足音だった。

今、先輩が――、【俺】って?


「うわっ! らしくないっすねぇ、先輩。マジでベタ惚れじゃん。聞いてるこっちが恥ずかしいわ」


俺と違ってってどういう事だ、とか文句も交えながら、純平はいつもみたいに先輩をからかってふざけているけれど。
ボクは先輩が放った言葉の意味よりも何よりも、彼の口から聞いた【俺】の響きの方が、ずっと気になってしまった。


多分……、後ろで硬直している美紗も、同じだと思う。


「誘ってもいいかな、なお?」

「……は、いっ!? な、何に!?」


【俺】を反芻しすぎて思考が止まっていたところに急に話を振られて、声が裏返った。
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