【完結】bitter step!
「ドライブ」

と、まるで純平と美紗の存在を忘れたみたいな極上のスマイルで、響先輩は言った。


瞬時に思い出すのは、生徒会室で最後に2人きりで過ごしたあの時間の会話。

『免許取ったら、一緒にドライブ行く?』
『ボク、まだ死にたくないです』


冗談まじりに交わされたそれは、あの日、ちょうど1週間前のボクと先輩にふさわしい、ギリギリの距離感を保ったものだったはずだ。

ここで一歩踏み込んできたのは、純平がさっき言ったみたいに、ボクらの距離が縮まっている証拠なのか。
それとも、先輩本人がさっき口にした【焦り】のためなのか。


「桜……一緒に見にいかない? 来月」


来月。
それはもう会えないはずの、彼が卒業した後の約束だった。
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