【完結】bitter step!
「私――、用事があったの。先に帰るわ」


不意に今まで黙っていた美紗がそう言ったかと思うと、

「えっ? おい、待てよ……」

俺も一緒に、と言いかける純平の言葉すら待たずに、彼女はすごい勢いで走り出した。


「速……」

そんなに運動が得意じゃない美紗にしたら、それはほとんど全力疾走だ。
そのことが、今の彼女の1人になりたがっている気持ちを主張しているようだった。

後を追おうとしかけた純平も、それを察してか足を止める。


美紗と、今日こそちゃんと話をしたかったのに……、しょうがない、か。


「ああ……彼女に悪いこと、しちゃったな」

美紗の心中を気にして呟いた先輩に、ボクも純平も、力なく首を横にふることしか出来なかった。
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