【完結】bitter step!
受信メールのフォルダを開いて、指定された時間と場所を確認する。


これが最後になるかもしれない、という思いは、不思議となかった。
根拠のない確信が、自分の中にあった。


少年漫画を本棚に戻して、夕焼けに染まった外を一瞥すると、クローゼットから薄手の上着を選んで羽織る。


大丈夫だ、きっと。
ボクは、ちゃんと自分と向き合ったから。
だから、――相手の気持ちも、ちゃんと、見えた。


「夕飯までに戻るね」

そう、キッチンで忙しなく動く母に声をかけてから、スニーカーに足を突っ込んだ。


「いってきます」

言い終わる頃にはもう、玄関のドアは閉まりかけていた。
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