【完結】bitter step!
車が進むのに合わせて左右の桜の枝が揺れて、舞い散る花びらが、先を促すように踊った。


「きれい……」

思わず呟いてから、柄じゃなかったな、と先輩の横顔をチラ見する。
その視線に気付いたのか、彼は優しく微笑んだ。


何も言わなくても、彼の隣はとても居心地が良くて安心できた。
ボクが心許せる、素になれる居場所。

美紗や純平の隣とは、少し違う。
時折襲ってくる、心臓をぎゅっと掴まれたみたいな息苦しさは――、痛くて苦くて、けどだからこそ、甘い。


――先輩、好きです。

あなたに会えて、良かった。
一緒に過ごした時間は本当に短かったけど――、想いは、必ずしも時間に比例しないと、ボクは知りました。


来週には遠くに旅立ってしまうあなたとの、最初で最後のドライブ――……。
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