【完結】bitter step!
と、心中でいくら吠えてみたところで。
実際のところ、彼は冷静な頭のどこかで分かっていた。
歳の差以前に【教師】と【生徒】。
想いが叶うはずもない。

規則やら道徳やら、そんな観念を取っ払ったとして、万が一にも彼女が落ちたとして。
うっかりここまで惚れてしまった女の人生を、簡単に傷つけるような真似が出来るわけがない。

万が一、いや億が一? 気持ちが通じたところで、絶対に手を出せない女。
ありえないと分かっていても馬鹿だから考えてしまう、そんな僅かな可能性を思い描いた妄想の先に辿り着くのは、いつでも、彼女を傷つける未来だった。

叶うはずもない。
叶えてはいけない。
それでも、願わずにはいられない想い。


テーピングを施しても熱を持って痛む足を少しばかり引きずりながら、部活が行われている体育館に戻る。
少年はその途中で、現役『学校一イイ男』とすれ違った。

――蹴落としてやる、畜生。
ふっと湧いてきた感情は八つ当たりに違いないが、やり場のない想いの矛先としては打って付けだった。

人気の理由のひとつである柔らかなオーラをまき散らしながら通り過ぎていった男を観察するが、競えそうなところは見つからない。
同性から見ても隙のない『イイ男』の後ろ姿が、そこにあった。

――しゃあねえな、とりあえずその肩書からいただきますか。
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