【完結】bitter step!
「……睨んでんじゃねー、美紗」
左から突き刺さる視線を乱暴に言葉で跳ねのけて、から揚げに噛みついた。
汚い、ヒドい言葉を吐いたボクに、美紗はいつもみたく怒らない。
傷つけたかもしれないと一瞬だけよぎった反省を、純平がゲラゲラと品なく笑ってかき消した。
――マジでコイツ、うっせえ。
なんでこんなにイライラするのか、自分でもよく分からない。
先輩とお友達になるという目的を引っ提げてきたのはボクだけのはずなのに、ほんの一瞬で純平に先を越されたのが悔しいのか。
それとも純平が『男同士』と呼ぶ付き合いの中には入れない、だけど『男と女』とも違う自分の存在の曖昧さを突き付けられたからか。
表情筋に全力で不快感を伝えて純平を睨んだ。
けど、その視界の隅に、嫌でも入ってくる。
「なお、……ちゃん」
先輩が躊躇いがちにボクを呼んだ。
慌てて表情筋へ下した命令を撤回しながら――、
さっきの『な』の謎が、解けた。
「鷺沼響って言うんだ、僕」
……サギヌマ、ヒビキ。
何故か、その名前を反芻した。
理由なんか、知らない。
左から突き刺さる視線を乱暴に言葉で跳ねのけて、から揚げに噛みついた。
汚い、ヒドい言葉を吐いたボクに、美紗はいつもみたく怒らない。
傷つけたかもしれないと一瞬だけよぎった反省を、純平がゲラゲラと品なく笑ってかき消した。
――マジでコイツ、うっせえ。
なんでこんなにイライラするのか、自分でもよく分からない。
先輩とお友達になるという目的を引っ提げてきたのはボクだけのはずなのに、ほんの一瞬で純平に先を越されたのが悔しいのか。
それとも純平が『男同士』と呼ぶ付き合いの中には入れない、だけど『男と女』とも違う自分の存在の曖昧さを突き付けられたからか。
表情筋に全力で不快感を伝えて純平を睨んだ。
けど、その視界の隅に、嫌でも入ってくる。
「なお、……ちゃん」
先輩が躊躇いがちにボクを呼んだ。
慌てて表情筋へ下した命令を撤回しながら――、
さっきの『な』の謎が、解けた。
「鷺沼響って言うんだ、僕」
……サギヌマ、ヒビキ。
何故か、その名前を反芻した。
理由なんか、知らない。