【短】Another Platonic
体は机に預けたまま、顔だけ上を向く葵。
細い腕が机の下に、だらんと力なく垂れている。
ガヤガヤとうるさい教室。
俺は言った。
「あのさ、……日曜、何時に待ち合わせにする?」
葵の表情が変わった。
うっすら開いた唇から、震えた声が漏れる。
「彼女と行くんちゃうの?」
「断った」
「……なんで?」
体を起こし、俺の顔を凝視する葵。
寂しがりの子どもみたいな表情で。
「それって理由がいるほど特別なことか?
水野と約束したんやから、水野と一緒に行く。
当たり前やんか」
「………」
「おいおい、卓巳~。何、水野のこと泣かしてんねん」
突然、ウッチーが後ろからガバッと俺に腕を回してきた。
「はあ!? 泣かしてへんし!」
「泣いてへんし!!」
俺と葵は同時に反論。
あまりの息のぴったり具合に、そばで見ていた華岡綾乃が笑う。
「卓巳くんと葵、なんか似合ってるよね」
その言葉に、俺が内心ニヤけてたことは……葵には内緒。