【短】Another Platonic

体は机に預けたまま、顔だけ上を向く葵。

細い腕が机の下に、だらんと力なく垂れている。


ガヤガヤとうるさい教室。


俺は言った。



「あのさ、……日曜、何時に待ち合わせにする?」



葵の表情が変わった。

うっすら開いた唇から、震えた声が漏れる。



「彼女と行くんちゃうの?」


「断った」


「……なんで?」



体を起こし、俺の顔を凝視する葵。

寂しがりの子どもみたいな表情で。



「それって理由がいるほど特別なことか?
水野と約束したんやから、水野と一緒に行く。
当たり前やんか」


「………」



「おいおい、卓巳~。何、水野のこと泣かしてんねん」


突然、ウッチーが後ろからガバッと俺に腕を回してきた。



「はあ!? 泣かしてへんし!」

「泣いてへんし!!」



俺と葵は同時に反論。

あまりの息のぴったり具合に、そばで見ていた華岡綾乃が笑う。



「卓巳くんと葵、なんか似合ってるよね」



その言葉に、俺が内心ニヤけてたことは……葵には内緒。




< 15 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop