【短】Another Platonic
葵を初めて知ったのは、
高校一年の、2学期だ。
「すんませーん。
おーい。誰か、おらん~?」
旧校舎を見上げ、バカでかい声を張り上げる俺に、
「時間のムダやって。
昼休けいの美術室なんか、誰もいるわけないやん」
と、友人のウッチーはあきれ顔。
「ん~、でも面倒くさいねん。
4階まで上がるの」
「んじゃ、勝手にすれば?」
「そうする~」
教室に戻るウッチーに手を振り、
俺はもう一度、旧校舎を見上げた。
「おーい。誰かおらん~?」
いったい何をしてたのか、って?
授業で使うスケッチブックをなくして探してたんだ。
たぶん、午前中の授業で美術室に置き忘れてきたんやけど
探しに行こうにも美術室は旧校舎の4階。
薄暗い階段をせっせと上るのは面倒だった。
というのは言い訳で。
ほんとは、オバケが出るって噂の旧校舎に入りたくなかったんだな。
で、もしも誰か美術室にいるなら、ちょっとだけ探してほしいな~。なんて。
はい。
俺、実はめっちゃ怖がりだったんです。