【短】Another Platonic
しばしの沈黙があった。
俺らはプカプカ海に浮かんだまま、互いを見合って黙り込んだ。
ぽっかりと口を開けた葵の顔が、急激に染まっていく。
それはそれは、みごとな赤に。
「あ……あのっ」
「いや、えっと、その」
顔が熱い。
たぶん俺も葵のこと言われへんくらい、真っ赤やったと思う。
「つまりっ。
俺は、誰の彼氏でもない俺になって、水野のそばにいたいねん」
「………」
「そこから先のことは、水野の気持ちだってあるし、俺ひとりでは決められへんってわかってる。
でも、マミとのことはもう決めたから」
「そんな大事なこと、急に決めたら後悔するってば……」
必死で説得しようとする葵に耳を貸さず、俺は浮き輪を引っ張り、再び泳ぎ始めた。
「……いくら水野でも、片想いを止める権利はないからな」
自分でも予定外やった、この告白。
いや、告白と言っていいのかどうかも怪しい、一方的な宣言やけど。
しかたないよな。
自分の気持ちに、はっきり気づいてもーたんやからさ。
河本卓巳。17歳。
本気の恋、見つけちゃいました。