【短】Another Platonic
撃沈した俺は、もう何も言葉を続けられなくなる。
最悪だな。
ところが、意外にも葵が口を開いたんだ。
「いいよ。今度はあたしんちで観ようよ」
「え?」
「好きな映画のビデオ、ふたりきりで観よう」
……これは、どういう意味かな。
わからへん。
でも、目の前にいる葵の笑顔は優しい。
しかも葵は、はにかみながら俺の手を握ってくれた。
……俺はそれまで、悔し泣きは経験したことはあったけど、嬉しくて涙が出るなんてことはなかった。
でも葵のあったかい手は、俺の涙腺を簡単にゆるめてしまった。
涙ぐんでるのを葵に見られないよう、俺は必死で目をそらす。
葵、ホンマは気づいてたんかな?
でも何も言わず、華岡家まで手をつないで歩いてくれた。
あ、そうや。
この日、もうひとつ驚きの出来事があったんだ。