【短】Another Platonic
「何してんの? 卓巳」
いきなり後ろから話しかけられ、俺は色んな意味で縮み上がった。
ふりむくと、グラスをのせたトレーを持つ、葵の姿。
(シーっ。静かに、水野っ)
人差し指をたててコソコソ声でそう言うと、葵は首をかしげた。
そのとき。
「……あんっ」
扉越しに響いた、華岡綾乃の声。
さすがに葵も状況が飲み込めたらしく、顔を真っ赤にする。
(と、とにかく俺ら、出ようか)
(うん……)
俺たちは空き巣のような足取りでソーっと階段を下り、華岡家を出た。
「あーっ。ビックリした」
胸をさすりながら大きく息をはく俺。
葵はバツの悪そうな顔で苦笑いする。
「綾乃って、ああ見えてけっこう大胆やから」
「へ~、人は見かけによらんな。
てか、学校のヤツらが知ったら大騒ぎするぞ。まさかウッチーがホンマにマドンナを落とすなんてな」