【短】Another Platonic
真夜中の学校に忍び込んだことがあるって人、けっこういると思う。
俺は初めての経験やったんやけど、何っちゅーか、昼間とは別物の空間やな。
世界中から音が消えてしまったような静寂。
真夏だというのに、どこかひんやりと感じさせるコンクリート。
校庭のクスノキが風でざわざわ揺れる。
「なんかちょっと怖いねー」
葵はそう言いつつも楽しそうだ。
開いている扉がないか探してみたけど、当然どこもしっかり閉まってた。
「旧校舎に行こうよ」
と言い出したのは、葵だった。
「あそこの非常階段、一度上ってみたかってん」
なるほど、非常階段なら夜中でも使えるもんな。
おばけの噂が一瞬頭をもたげたけれど、すぐ消去。
ここで俺がビビッたら、終りやろ。
それに、葵がいるから恐怖心より嬉しさの方が勝っていたんだ。
俺らは旧校舎の外側に設置された非常階段を上った。
汗をかき、息を切らし、辺りは真っ暗闇で、
でも楽しかった。