【短】Another Platonic
4階でどちらからともなく足を止める。
初めて会ったとき葵がいた、美術室のある4階だ。
「うわぁ。プチ夜景やね」
眼下に広がるのは、建物の灯りや車のテールランプ。
「ホンマや。思ったよりキレイやねんな」
「東京タワーじゃなくて通天閣なのが渋いけどね」
「はははっ」
俺らは階段に座り、コンビニの袋をがさがさと開ける。
ダイエットコーラと、チョコレート。
複雑な乙女心の組み合わせ。
乾杯!といきたいとこやけど、グラスがないから2リットルのペットボトルに、そのまま口をつける。
行儀悪いけど誰も見てないからいいねん。
夏の夜をふたり占めしてるみたい。
これってちょっと最高の気分やな。
幸せで、なんか切なかった。
「なあー、水野……。
いつか俺らが大人になったらさぁ、こんな風に階段の地べた座って一晩すごしたこと、アホやったなあって思うんやろか。
乾杯も、ビールとかカクテルになるんかなあ。
でもさ、もしそうなっても、できればまたこうしたいよなあ」
コーラで酔っ払ったような俺の隣で、葵が笑ってた。
夜の風が、気持ちよかったな。