【短】Another Platonic
俺らは一晩中、いろんな話をした。
映画のこと、家族のこと、ペットのこと。
気づけばいつの間にか空が白み始め、朝が訪れていた。
ペットボトルに残った生ぬるいコーラで喉を潤し、俺は今さらやけどつぶやいた。
「……おはよ」
学校で毎日交わしてたはずの挨拶が、なんか照れくさい。
「うん。おはよう」
葵も恥ずかしそうに応える。
高層マンションの影になっていた朝日が昇り、俺たちのいる非常階段にも降り注いだ。
俺らは目を細め、東を見た。
……生まれたての太陽。
きらきらと光の粒が踊る。
建物の影は、黒く濃い。
きれいやな……
胸がしびれるような、感動を覚えた。
でもたぶん、一人で見ていたらあんな風には感じなかったと思う。
言葉が、自然にあふれてくる。
「水野……俺、お前のことが好き。俺と付き合ってほしい」
「うん……」
やっと言えた。
根性なしの俺を労わるように、葵がやさしく微笑んでた。