【短】Another Platonic
【7】彼女の涙
夏休み、早く終わらへんかなぁ。
新学期を待ちわびる俺には、始業式までの2日間が果てしなく長く感じてしまう。
てか今までは、一年中が夏休みでもいいぜって思ってたのに。
今では葵と毎日会える学校に、早く行きたくてしかたない。
おそるべし、恋のチカラ。
でもそれは俺だけじゃなくて、
もうひとり、新学期を心待ちにしていた男がいた。
「よーっ! おっはよ!」
9月1日。
誰よりもデカイ挨拶をして教室にはいってきたのは、ウッチーだった。
「うぃーっす」
俺の机の周りに集まっていたクラスメイトたちが、手をあげてウッチーを迎える。
が、ヤツは俺んとこにも自分の席にも行かず、
まっ先に窓際の、華岡綾乃の席に直行した。
「はははっ! あいつ、新学期早々あれかよ」
クラスメイトたちは茶化したが、真相を知っている俺は内心ほくそ笑む。
ノンノン。甘いよ君たち。
少年・内田はとうとうマドンナのハートを射止めたのだよ?
このこと知ったら君ら、目ん玉ぶっとぶやろ?
でもまあ、はた目には以前と何も変わっていないように見えるけどな。
どう見たって一方的にウッチーが惚れてるって感じだ。