【短】Another Platonic
――バサバサバサッ!


そんな音が頭上でして、俺は反射的に顔を上げた。


鳥が羽ばたく音。


でも、鳥なんていなかった。


スケッチブックだった。


「あ……」


真上から注ぐ日差しをさえぎるように、スケッチブックは俺めがけて落ちてくる。


羽を広げたような白いページは、強烈な日光の影で、黒く見えた。



……バサッ。


力尽きた鳥が倒れるときって、こんな感じやろうか。



地面に落ちたスケッチブックは、ちょうど午前中の授業で描いた、人物画のページを開いてた。


題名:“友人”。
モデルはウッチー。


我ながら下手くそな絵の右上には、書いた覚えのない英文が。



【Don't disturb my pleasure】



驚いて4階を見上げた。


閉まってく窓に、太陽がキラキラと反射する。


その向こう側で、
女の子が少しだけ微笑んだ気がした。





これが葵との出会いやった。


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