【短】Another Platonic
苦しさに似たこの気持ちは何やろう。
本気で好きな人なら、指一本触れずに何年でも待てる。
そう思ってたけど、そんなん嘘や。
俺は今、モーレツに葵が欲しくて、欲しくて、狂おしい。
すると、下から葵の手が伸びてきて頬をつねられた。
「アホやなあ。謝らんといてよ。
私も、同じ気持ちなんやから」
「………」
嬉しすぎて泣きそうやった。
俺らは裸になり、お互いの体とココロを、大切に大切に愛し合った。
……もし、世の中のみんなが
こんなにも愛しい気持ちでセックスしてるんなら、
“すべての命は愛の結晶”って、あれ、ホンマやと思う。
ダサいけど俺、生まれてきて良かったって、心の底から思ったんだ。
抱き合ったあと、俺らはしばらく裸のままベッドにいた。
テレビではいつの間にか映画が終り、エンディングが流れてた。
「……私、この映画好き。
すごい哀しい物語やけど。
触れられなくても、愛って存在していいんやって思えるから」
――ぽつりと言った葵の言葉は、ただの映画の感想やったんかな。
それとも葵は……
すでに自分の運命を、このときから予感してたんかな。
なあ……葵。
どっちやったんやろう?
俺はお前のこと、まだ何もわかってへんかったよ。