【短】Another Platonic

ふたりが付き合い始めて、初めての正月。


初詣は家族でも友達でもなく、葵といっしょに行きたかった。



待ち合わせ場所の駅に、20分も早く到着した。

もちろん葵の姿はまだない。


俺はホットの缶コーヒーを買って、ベンチに座り葵を待つ。


着物姿の人たちが行き交うのを見てると、正月気分が盛り上がってくる。



葵……今日はどんな服で来るんかな。

着物とか着てくれてたらめっちゃ嬉しいけど、たぶん、ないやろな。


そういえば昨日の大晦日は、葵んちは親戚が集まって宴会するって言ってた。


葵も、ちょっとは飲んだんやろか。


まさかそれで今日寝坊とか、ないよな?



葵がなかなか来ないもんやから、俺はあーだこーだと考えをめぐらせていた。


でも別に、待ちくたびれてたわけじゃないんだ。

好きな人を待つ時間は楽しかった。



手の中の缶コーヒーはすでに空っぽ。

体がだんだん冷えてきた。


時計の針は、約束の時間をとうに越している。


――もしかして、来る途中で事故にでもあったんちゃうか?


俺は心配になり、公衆電話から葵の家に電話をかけた。



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