【短】Another Platonic
『――もしもし』
電話に出たのは男の声やった。
お父さんやろうか?
いや、声が違う。
俺は何回か葵のお父さんに会ったことがあるから、電話に出たのが違う人やということはわかった。
「あ、あの、河本といいますが、葵さんは……」
『……』
一瞬、妙な沈黙が受話器越しに伝わってきた。
『葵は体調が悪いって言って、部屋で寝てます』
「え?」
『ただの風邪やと思うから心配せんといて下さい』
俺が返事する前に、電話は切れた。
風邪……か。
しかたない。
初詣はあきらめて、帰ろう。
少し心配やったけど、電話でああ言われてしまった以上しつこくするわけにもいかへんし。
何より俺は、葵が来ない原因がハッキリしたことで安心していたんだ。
――それが、そもそもの間違いだったってことも、まだ知らずに。