【短】Another Platonic
冬休みの間、葵からの連絡はなかった。
当時はまだ高校生が携帯電話を持つ時代じゃなかったから、何度も家に電話するのは気がひけた。
【カゼ、ダイジョウブ?】
そんなメッセージをポケベルに送ってみるけど返事はない。
俺の知らないところで、何かが起こってる。
でもそれが何なのかわからなくて。
テレビから流れる陽気な正月番組にすら、俺はイラついてた。
ちっとも楽しくない冬休みがやっと終り、3学期初日。
家の前で自転車にまたがろうとしたそのとき、
葵の姿を見つけた。
「おはよ。卓巳」
「……おは、よう」
葵は元気いっぱいに駆けてきて、俺の後ろに座る。
その勢いで自転車がグラリと揺れた。
「うわっ。危ないなあ」
「ほら早く出発!」
あ…あれ??
なんか葵、めっちゃ普通やし。
てかいつも以上に元気やし。
明るい葵の声に、拍子抜けしてしまった。