【短】Another Platonic
「いや、でも、大丈夫って言うてもお前……」
オロオロと葵の涙をふくことしかできない俺。
興奮はすっかり冷めた。
葵の涙の理由がわからず、ただただ混乱していた。
葵は呪文のように、“大丈夫”をくりかえす。
「私は大丈夫やから……続けて。お願い。大丈夫だってこと、証明させてよ」
証明?
何やねん、それ。
葵、さっきから言うてることが、変やん。
「なあ、水野。何があったん?」
答えの代わりに首をふる葵。
「話してくれよ。俺は何を聞いても、絶対に水野から離れへんから」
俺は心からそう言ったけど、葵の唇が開く気配はなかった。
当然だ。
“あんなこと”、どうして簡単に人に言えるやろう?
でも、このときの俺はまだ、何もわかってなくて――
「――水野。
何……これ?」
よく見ると、葵の肌には細かいスリ傷のようなものがあった。体中。
「どうしたん? なあ」
「……っ」
「頼むから、話してくれよ!」
葵の瞳から洪水のように涙があふれる。
そしてゆっくりとつむぎだされた言葉は――耳を疑うようなものだった。