【短】Another Platonic
葵のお父さんが、葵とは血のつながらない継父だということはも知っていた。


そしてお父さんには、3歳年下の弟がいるということも。


葵にとって義理の叔父さんにあたるその人は、子宝に恵まれず奥さんと二人暮らしで、
葵を昔から我が子のように可愛がってくれていたらしい。



昨日の大晦日、集まった親戚の中にはその叔父さんもいた。


少し日本酒を飲んだ葵はリビングのこたつで寝入ってしまい、目が覚めたのは夜中だったという。


薄暗い部屋には、ひとりを除いて誰もいなかった。


そのひとりが――


「……叔父さんやったねん」


葵は俺の胸に顔をうずめ、ふるえながら言った。


「叔父さん……眠ってる私の体、コタツの中で触ってた……」


その言葉を聞いたとき、俺は全身から血の気が引いていくのを感じた。


スリ傷のできた肌は、何度も何度も強く洗ったせい。

忌まわしい出来事を消し去るように、何度も。


俺が知らない冬休みの間、葵の身にこんなことが起こってたなんて……。



だけど俺をもっと驚かせたのは、そのあとの葵の告白やった。


「私ね、叔父さんにああいうことされるの、初めてじゃないねん」


「……何、それ?」


「子供の頃から何度も……。
でも私は、なぜかそのことを昨日まで忘れてたの」



< 56 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop