【短】Another Platonic
単純に“セックスできないから辛い”わけじゃないねん。
そりゃあもちろん、それもあるけどさ。
一番辛かったのは、好きな人に拒まれるということ。
触れただけで真っ青になる葵の顔を見ること。
泣きながら「嫌や」って叫んで、汚いものみたいに払いのけられること。
もちろんそれはフラッシュバックのせいで、けっして本心から俺を拒んでるわけじゃないって、わかってる。
でも何度も拒まれるうちに、自分が下劣で醜い人間のように思えてきてしまうんだ。
「卓巳。ホンマにごめんね……」
「だーいじょうぶ! 俺は全然平気やから」
ちくしょう……。
葵を守りたいのに。
こんなに強く抱きしめてるのに。
俺は、無力だった。
いくら抱きしめても葵の心はこの腕をすり抜けて、辛い過去に引きずり込まれてしまう。
どんなに手を伸ばしても、葵の過去には届かない。
俺の手は、葵を救えない――。
しだいにふたりの間にはあきらめの空気が漂い始め、セックスそのものを遠ざけるようになっていった。
そして俺たちはそのまま、高校3年になった。