【短】Another Platonic
父さんは俺の頭をそっとなでてくれた。
大きくて、ゴツゴツした手。
なんて温かいんやろう……
この手でずっと母さんを守り、毎日働いてお金を稼ぎ、今日まで俺を育ててきてくれたんや。
それにひきかえ俺は
俺の手は……。
「なあ、卓巳」
ガキみたいに泣いてる俺の頭をなでながら、父さんは言う。
「お前の手は誰かを守ることも、誰かを傷つけることもできるねんで?
お前は、どうしたい?」
ボロボロとこぼれる涙が、廊下の床を濡らした。
父さん。
俺も、父さんみたいに大事な人を守りたいよ。
葵をこの手で守りたい。
でも傷つけてしまうねん。
俺は“男”やから。
あいつと同じ、“男”やから。
それだけで
葵を、傷つけてしまうねん。
――もう…
どうしたらええのか、わからへんよ。
葵。
君のために
俺ができることなんか、あるんかな……。