【短】Another Platonic
【11】さよなら
それでも俺たちは別れなかった。
いつ葵を傷つけてしまうかとビクビクしながら。
セックスどころか、キスですら傷つけるんじゃないかと脅えながら。
だけど一緒にいた。
別れたくなかった。
――あのことが起きるまでは。
「卓巳っ! やめろよっ!!」
ウッチーの声が後ろで響く。
だけど俺の拳は止まらず、男の左頬にめりこんだ。
妙なうめき声を上げて、廊下の壁に背中をぶつける男。
金井信二。
俺と同じクラスの、特に仲がいいわけでも、悪いわけでもないやつだ。
「な…殴ることないやろ!」
金井は腫れた頬を押さえ、下から睨みつけてくる。
「俺は親切で教えてやったんやぞ!
――卓巳の女が浮気してるって」
「うるさいっ!」
叫びながら、倒れている金井に飛びかかった。