【短】Another Platonic
事の始まりは1分前。
授業の合間の小休憩に、トイレに行こうとした俺を金井が呼び止めた。
――『なあ。お前の彼女って4組の水野やんな?
あいつ、こないだ他の男とホテルに入っていくの見たで』
信じられへんかった。
いや、信じる信じないの前に、俺は金井を殴り飛ばしていた。
葵が……
男とホテルに?
嘘や。嘘や!
嘘に決ってる――!
「――やめとけって、卓巳!」
後ろからウッチーにはがい絞めにされ、金井から引き離される。
俺は肩で息をして、金井をにらんだ。
最初になぐった金井の左頬が、一目でわかるほど腫れていた。
俺も何発か反撃を食らい、唇が切れている。
血の味だ。
「ちょっと……何してんの、卓巳!?」
葵の声が響いた。
よく見てみると周りには野次馬が集まっている。
それをかき分けるように、葵は俺のもとに駆け寄ってきた。