【短】Another Platonic

葵本人が登場してバツが悪かったのか、金井は苦い表情で立ち上がる。


「ま、そんなに騙されたいんやったら、勝手にしろや」


捨て台詞を残して去っていく金井。

葵の目が丸くなった。


「何? 今の言葉……」

「さあ」


俺は葵を残して歩き出す。

捨て台詞の意味も、ケンカの理由も、葵に話せるわけがない。


「待ってよ、手当しなきゃ」

「平気やって」

「私が平気じゃないねん!」


腕を後ろから引っ張られ、思わず足が止まった。


振り向くと、今にも泣きそうな葵の顔。


……無理もないよな。

殴り合いのケンカなんか俺のキャラちゃうし。
心配になるのは当然や。


「わかったよ……」


俺は渋々うなずいた。







保健室には先生がいなかった。


「ラッキーやね。ケンカしたことバレずにすむやん」


葵は手際よくガーゼやら消毒液やらを用意する。



< 73 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop