【短】Another Platonic
葵本人が登場してバツが悪かったのか、金井は苦い表情で立ち上がる。
「ま、そんなに騙されたいんやったら、勝手にしろや」
捨て台詞を残して去っていく金井。
葵の目が丸くなった。
「何? 今の言葉……」
「さあ」
俺は葵を残して歩き出す。
捨て台詞の意味も、ケンカの理由も、葵に話せるわけがない。
「待ってよ、手当しなきゃ」
「平気やって」
「私が平気じゃないねん!」
腕を後ろから引っ張られ、思わず足が止まった。
振り向くと、今にも泣きそうな葵の顔。
……無理もないよな。
殴り合いのケンカなんか俺のキャラちゃうし。
心配になるのは当然や。
「わかったよ……」
俺は渋々うなずいた。
保健室には先生がいなかった。
「ラッキーやね。ケンカしたことバレずにすむやん」
葵は手際よくガーゼやら消毒液やらを用意する。