【短】Another Platonic
……あの子や。
おばけ美術室の、あの子。
これを再会と呼べるかどうかはわからへんけど、俺は妙に感動していた。
校舎の下から見たときは分からへんかったけど、背ぇ低いんやな。
髪、あのときより長くなったな。
ミズノアオイ。ええ名前やな。
そんなことを考えながら、俺はしばらく葵を見てた。
いや、見つめてた、って言った方が正しいかも。
無遠慮な俺の視線に葵が気づくのは、時間の問題やった。
「あっ」
葵の口から漏れた声。
俺はなんだか嬉しくなった。
頭をかきながら近づいて、とりあえず話しかける。
「えーっと……どうも。お久しぶり」
上目遣いに俺を見る葵。
猫みたいな瞳。
「覚えてるかな? 俺――」
「河本卓巳くん」
「あ、覚えてくれてたんや」
初めて聞いた声は、見た目のイメージからすると低く感じた。
話し方も、俺の周りにいる女の子たちよりずっと落ち着いてる。
「覚えてるよ。めっちゃ絵が下手な河本卓巳くん、やろ?」
「それは言わんといて」