【短】Another Platonic
「体を売る理由なんか、人それぞれよ。一番多い動機はやっぱりお金やろうけど、それだけじゃないし」
「……華岡さんは?」
ふっと微笑んで華岡は立ち上がる。
「ねえ、何か飲もっか。
私のおごり」
そう言って小型の冷蔵庫から取り出し、またベッドに座る華岡。
「はい、どうぞ」
「……ありがとう」
手渡された缶ビールを開けると、炭酸が小気味いい音を立てた。
酒なんかろくに飲んだことがない俺は、ちびちびと口をつけた。
苦味と炭酸が広がるだけで、うまいとは思えない。
「ねえ、こんな話知ってる?」
突然、華岡が口を開いた。
「性被害にあった人が、のちに売春に走るケースがあるんやって」
「……?」
「おかしな話よね。
愛のないセックスの辛さは、自分が一番よく知ってるはずやのに。
わざともう一度、その状況に自分を追い詰めようとするの」
「なんで……?」
華岡の言っていることが、俺にはよくわからなかった。
でも、ちゃんと聞かなければいけない、そんな気がした。