【短】Another Platonic
華岡は穏やかな口調で続ける。
「専門家が言うには、つらい状況を無意識に再現して、打ち勝とうとするんやってさ。
だから性被害にあった人の中には、わざと自分の体を汚していく人がいるって」
「やけに、詳しいんやね」
「この店にもそういう子がいるから」
……ハッとした。
「もしかして、華岡さん……」
震える俺の声をさえぎるように、華岡は微笑む。
「うん。…昔ね、レイプされたことがあるから」
「……っ」
どうして、笑えるんやろう。
どうして、そんな泣きそうな顔で。
それでも涙を流さず、笑うんやろう。
――愛のないセックスはただひとつの救いであり、罰。
華岡はそう言った。
リストカットに救いを求める人がいるように、自らを傷つける行為で、一瞬の安堵を得て
そのたび傷ついていく。
どんどん、どんどん
無限に傷ついていく。
それが、
汚れた自分への罰だと。
だけど俺は思う。
なぜ彼女が――いや、彼女たちが、罰を受けなきゃいけない?
そもそも彼女たちに罪なんかない。
汚れてなんかいない。
悪いのは、汚いのは
卑劣な行為で彼女たちを虐げた、男の方やんか。