【短】Another Platonic
「ごめん……俺、辛いことを思い出させてるよな」
「ううん、私が話したくて話したんやから平気だよ」
「でも、ホンマは早く忘れたいやろ!? 今すぐひとつだけ願いが叶うとしたら、真っ先にその記憶を消すやろ?」
華岡は少し考えて、首を横に振る。
「ひとつだけの願いなら……
私はもう一度、内田くんと抱き合いたい」
「……」
「大好きな人と、ただ普通に抱き合いたい」
こんな――…
こんな想いを、きっと、葵も。
俺はこらえきれず、涙をこぼした。
華岡の手が、そっと俺の手の上に重なった。
すべて察しているような、
やさしい手。
温かくて
胸が苦しくなった。
「……いっぱい泣いていいよ。
延長料金、サービスしといたげるから」
そう言って笑った華岡は、
楽しかったあの頃の笑顔、
そのままで。