睡恋─彩國演武─
*
「蛇神?」
千霧は瞳を大きくして、由良の顔を覗き込んだ。
「ええ。『蛇神教』なんです。大きくて、白い蛇の神なんだそうで……」
このぐらい、と彼は手を広げてみせる。
……その説明は少しわかりづらい。
「脩蛇といいます」
「しゅうだ……?」
王が崇拝するのが蛇だとしたら、彼が蛇憑きだというのも説明がつく。
脩蛇という異形が白樹にとり憑き、この国全体の禍となっているのだと。
脩蛇、という言葉に反応し、月魂が光を帯びた。
「……月読、何か言いたいことでもあるのか?」
そっと鞘に触れると、心に言葉が降ってくる。
『……あるな、言いたいことなら沢山』
「聞かせて」
『そなたは知らないのか?脩蛇というのは、青龍と大喧嘩して負けた憐れな異形のことだぞ』
千霧が目を丸くすると、月読は続けた。
『だが奴は邪神。そもそも、奴が人を喰らって、青城の邑を喰い尽くしたのが青龍の逆鱗に触れたんだがな』
千霧は絶句した。
月読は嘘を言わない。
それ故、今の話が全て真実なのは明確だった。
『そなたが生まれるより昔の話だ……。先代の龍の頃。白虎も知っているんじゃないか?』
(呉羽も、知っている──…)
それなら、呉羽はこの状況をどう思っているのか。