睡恋─彩國演武─
「……どうかなさったのですか?」
由良の声が響いて、我にかえる。
月読の聲はいつの間にか聞こえなくなっていて、そこには剣が静かに横たわっているだけだった。
「いや……」
なんでもない、と付け足し、月魂に布を巻き付ける。
その動作を見詰めていた由良だったが、何も言わず立ち上がると、千霧を残して自らは牢の外に出た。
「そろそろ衛兵が目を醒ます頃。春牧に勘づかれないように俺は戻ります」
また幾つもの鍵が、彼の掌の中で金属音を発した。
「……儀式には俺も立ち合いますから」
鍵の回る音に、千霧が顔をあげる。
「……貴方の目的は、何?」
彼は目を伏せ、鍵穴から鍵を引き抜くと、それを見つめながら口を動かした。