睡恋─彩國演武─
確かに彼の唇は、そう綴っていた。
信じられなかった。
人に優しい由良が、そう口にした事実を、受け止めることができない。
由良は自嘲気味に、少しだけ口元を歪める。
「……俺の、道ですから」
言い切られてしまえば、千霧が口を挟むことなど出来ない。
「───失礼、します」
由良は千霧の顔を見ずに、部屋を出ていった。
「由良──…」
一人残った部屋の中で、蝋燭の小さな灯りだけが妖しく揺らめいていた。
*
「由良──…」
揺らぐ灯火の中で、二つの影が融け合った。
まるで一人のように。
「もうすぐ、終わるから」
黒い髪が、赤みを帯びて照らされる。
「君は──?」
対照的な銀の髪の男は、落ち着いた声で尋ねた。
影が、ゆらりと踊る。
「僕は──…」