睡恋─彩國演武─
〔弐〕月夜の逢瀬
〔弐〕月夜の逢瀬
──あっという間だった。
とにかく由良は呉羽の背中に必死で掴まり、呉羽も必死に空を駆け、アイを追った。
陽は、それほど面積の広い国ではない。
ただ、街道が整備されていないため人が使える道が少なく、人々は回り道をしながら目的地へ行かなければならないのだ。
それゆえ、地上でなければ国を渡ることなど容易かった。
「うぅ……」
呉羽の背から降りると、由良は真っ青になって震えていた。
「あーらら、高いところ、苦手だったみたいね」
「……アイ、由良をからかう前に手当てを」
「はいはい。じゃ、迷わないようにね。複雑な店だから」
そう言うと、アイは華奢な腕で軽々と千霧を持ち上げ、建物の奥へと入っていく。
案内されて行き着いた先は、色街のようで、アイが入って行ったのも同じ類の店だった。
赤くなったり青くなったりしている由良を連れ、呉羽も後を追った。